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働く一人ひとりが
「サステナビリティ」という価値観で行動する会社を目指す

ミツウロコグループにとってのサステナビリティ経営とは

昨今は世の中でサステナビリティ経営が一般化し、定着していると感じています。当社は2026年で創立100周年、創業創業140周年を迎えますが、古くから事業を通じて治山治水に貢献し、環境に配慮したサステナビリティ経営をしてきたという自負があります。ここで改めてサステナビリティの本質は何かと考えると「米百俵の精神」が頭に浮かびます。私はよく新潟と東京を往復するのですが、新幹線で湯沢市の先にある長岡市や新潟市一帯は江戸時代には長岡藩がありました。長岡藩は幕末の戊辰戦争で焼け野原となり、その日の食事にも事欠く状態でしたが、長岡藩大参事である小林虎三郎は「どんな苦境にあっても教育をおろそかにできない」と主張し、国漢学校を設立します。長岡藩の窮状を見かねて支藩である三根山藩から見舞いとして米百俵が送られてきた際、飢えに苦しむ藩士たちは分配を求めましたが、虎三郎は「百俵の米も食えばたちまちなくなる。だが教育にあてれば明日の一万、百万俵となる」と言って米を売り、その代金を国漢学校の書籍や用具の購入に充てたのです。目の前のご飯はもちろん大事ですが、遠い未来を考えたときに、長岡藩には何が一番必要なのか。もっと食べられるようにするにはどうしたらいいのか。こうした問いを突き詰めたところ、目の前のご飯よりも将来のための教育という結論に至ったのです。藩の運営と経営は同様です。当社グループにおいても、一人ひとりがいろいろな学びを通じて気づきを得て、さらに成長することができれば、人的資本が強化され、もっと「幸せな会社」をつくることができます。私にとってのサステナビリティ経営は、将来の利益のために社員教育をはじめとした人財への投資を継続的に行うことが、ブレてはいけない中心だと考えています。そしてサステナビリティという考え方をもっと社内に浸透させることができれば、各々の社員が「何をすれば持続可能になるのか」をよく考えるようになり、将来を見通す目を持って既存事業や新規事業に取り組み、現場で自律的に最適な判断をする会社になります。「幸せな会社」となれば、その会社で働く人は自分の子どももその会社で働かせたいと思うようになります。今後も100年以上続く会社とするためには、社員の一人ひとりに「自分の子どもを当社に入れたい」という尺度を持ってほしいと願っています。親戚や親友でもかまいません。5年後に定年を迎える自分が、自分の子どもを新卒で入社させた場合、約40年間働くことになります。こうした中長期的な視点で会社を良くしていくことが、次の100年間につながっていくと考えています。

上場企業のメリットを生かしつつ顔が見えるローカルな商売を大切に

当社の事業はエネルギーという基幹産業がメインであり、商品の内容や品質にそこまで差が生じ難いという特徴があります。地域に暮らすお客様それぞれの生活を支える事業ですので、その地域の企業と同じフィールドで事業を行っています。私たちは全国で多様な事業を展開する上場企業ですので、その強みを生かしてネットワークのサービスや価格といった地域の企業ではできない付加価値を上げて商品を提供することにより、お客様に選ばれています。ただし、お客様の生活に近いところで事業を行っているので、頭を高くしたら商売になりません。お客様と同じ目線で物事を見て、きちんと頭を下げられないとお客様は離れていってしまいますので、地域にとけこんで地域社会と共生することを大切にしています。当社グループは「いつもここにいます」「皆さんの声に耳を傾けています」「顔が見えるので安心してください」という姿勢を崩すことなく、まるで小さい魚がたくさん集まって大きい魚のようになって自由に海を泳ぐ絵本の『スイミー』のように、全国各地にある小さな販社が集まって大きなグループ会社を形成しているイメージです。スケールメリットを生かして経営の効率化が図れた分、社員の待遇にも反映されますので、おそらく他の地域企業よりも働きやすい職場環境を提供できていると思います。
近年は働き方の多様化が促進されていますが、当社は全国で事業を展開しながら地域社会で活動しているため、昔から多様な働き方の選択肢がありました。例えば「埼玉県民なので埼玉で働きたい」「関西へ行きたい」「全国を転勤して周りたい」といった要望に応えてきましたし、故郷人事という制度もあり「この役職になったら東北に戻りたい」「50歳になったら名古屋に帰りたい」という人事にも配慮してきました。営業がしたい人、管理業務がしたい人、物流業務がしたい人などに適した幅広い職種があり、人財の多様性にフィットしやすい土台があったと言えます。働き方が違えば価値観も異なりますので、経営理念やゴールを共有して同じ方向を向きながら、多様な働き方を許容・包含できる魅力的な組織づくりを目指していきます。

社長メッセージ

プラネタリーヘルスの実現に向け社内での啓蒙活動をスタート

最近のニュースで2023年のスルメイカの漁獲量は最盛期の3%まで減少していると知りました。原因は乱獲だけでなく、温暖化による海水温の変化などで生育環境が激変し、卵が孵化しないあるいは稚魚が生き残れないからだそうです。これは明らかに人間によって引き起こされた食物連鎖への悪影響であり、生態系破壊の一種です。1960年には30億人だった世界人口は、2022年に80億人を突破しました。世界人口は2037年頃に90億人、2058年頃に100億人を突破すると予測されています。短期間で極端に人口が増加したことが、地球の健康に間違いなく悪影響を及ぼしています。このままだと人類は、もしかしたら100年後には火星へ移住しなければならないかもしれません。
そこで注目したいワードが「プラネタリーヘルス」です。これは地球の健康と人間の健康とが相互に影響し合うメカニズムを探求する概念です。当社は事業会社ではありますが、こうした取り組みを率先して行うべきだと考えています。まずは当社の社員全員が、「プラネタリーヘルスとは何か」を語ることができる会社にしたいと考えています。そのためにはランチ、飲み会、井戸端会議などで日常的に「プラネタリーヘルスって知っている?」という話題が上がるようになるのが最初のステップです。プラネタリーヘルスというワードを知ることで、どの部門でも地球の健康と人間の健康の両方をバランス良く考えた事業展開をするようになるでしょう。
「善因善果」という言葉があるように、良い行動をすれば良い連鎖が生まれ、好循環をもたらします。反対に「悪因悪果」もあって、悪い行動をすれば悪い連鎖が生まれ、悪循環をもたらします。それがプラネタリーヘルスの原理だと思います。地球のどこかで一つバランスが崩れると、まるでドミノ倒しのように広がっていきます。その悪影響が地球全体にまでまん延しているというのが現在の地球の状況です。早いうちにどこかでドミノを1回ストップさせて、良い行動のドミノを始めなければなりません。昔はCMなどでも「一日一善」という呼びかけをして善行を推奨していましたが、一日に一善でも行動をしていけば、地球は健康へと向かうはずです。
私は2002年に初めて社員の前で話す機会があり、一言「ゴミを跨ぐな」というメッセージを伝えました。多くの人は誰かが見ていたらゴミを拾いますが、誰も見ていないときにゴミを拾える人間に私はなりたいという話をしたことを覚えています。どうしてもSDGsやESGという言葉を耳にすると、森林の保存や海洋汚染対策、水資源の節約、生物多様性の保全など大きすぎるテーマが思い浮かびますが、身近で簡単にできること、ストレスなく続けていけることに目を向けることも大事です。昔は道路に煙草の吸殻や吐き捨てたガムが落ちていましたが、最近はほとんど見かけなくなりました。いつの間にか始まったゴミの分別も今ではすっかり習慣化され、無理なく続けられるようになっています。プラネタリーヘルスも小さな善行から始めてルーティンとなり、サーキュラーエコノミーや循環型のビジネスモデルとなっていくことが一番の近道になると考えています。
当社は石炭、石油、ガスといった化石燃料を中心に扱っているので、無駄遣いをしない、最後まで使い切る、なるべく低酸素のものを選ぶというのが今すぐできる善行です。関係機関や取引先と協力し、ガスボンベの鉄品回収や再利用まで実施することができれば、循環型のビジネスモデルにもつながります。フード部門であれば、環境に配慮した方法で食品を生産・輸送・調理し、フードロスをなくすことです。
さらに将来を見据えて有用菌を用いた土壌改良など、既存事業とは全く異なる視点で地球環境を直接改善していくような事業にも取り組んでいきたいと思います。今後、地球の健康にとってプラスとなるプラネタリーヘルス関連の投資には、ブレーキをかけずアクセルを踏んでいく方針です。例えばその一つに、コーヒー豆の栽培があります。当社は最新の遠隔監視制御システムを導入した「スマート農業ハウス」を開発しました。LPガスをエネルギー源とすることで脱重油によるCO2排出量削減にも貢献できます。環境面の効果だけでなく社会面の効果もあります。既存のハウス栽培農家は家族経営も多く、人手不足や跡継ぎ問題に悩まされています。業務の効率化も喫緊の課題ですので、新規就農者も含めてサポートすることで農業を支援し、地域社会との共生を図っていきます。

サステナビリティ経営をさらに推進すべくサステナビリティ委員会を新設

2024年度にはサステナビリティ経営を推進する体制整備として「サステナビリティ委員会」を設置しました。雪だるまも最初は拳ほどの大きさの芯から作り始めます。雪玉をコロコロ転がしても最初のうちはなかなか大きくなりませんが、ある大きさに到達した瞬間、一気に大きくなっていきます。当社のサステナビリティ経営という雪だるまの芯となるのが、サステナビリティ委員会の役割です。先ほどの米百俵ではありませんが、全国の社員やグループの仲間たちに「なぜサステナビリティ経営やプラネタリーヘルスに取り組むのか」という考えを徹底的に落とし込んでいくためには、どうしても人財教育は欠かせません。全員が同じ想いになるようにするための投資は惜しまないので、eラーニングなどのツールを駆使して、社員全体の力をどこまで最大化できるかに挑戦してほしいと思います。サステナビリティ委員会には、そこにしばらく注力しつつ、ビジネスも一緒に両輪として具体的に動かしていくことを期待しています。

6つのマテリアリティの中で健康経営に注力する理由

当社グループでは 1環境への貢献 2地域社会への貢献 3コンプライアンスの徹底 4安全および災害対策の強化 5健康経営 6ダイバーシティの推進の6つをマテリアリティとしてサステナビリティ経営に取り組んでいます。
環境および地域社会への貢献については、各会社・各部門の担当レベルで対応しています。コンプライアンスの徹底については、有効かつ適正な内部統制を徹底しつつ、様々な施策を通じて法令遵守体制の維持を図っています。安全および災害対策の強化については、日本では災害が起こるものだという前提で継続的に取り組んでいます。ダイバーシティの推進については、新卒・中途採用、雇用形態、国籍、性別、年齢、宗教等に囚われない組織と、その多様性を受け入れ強みとして生かす企業文化の醸成を目指しています。
私は6つのマテリアリティの中でも、今は特に健康経営に注目をしています。その地域に社員が一人でもいれば、その人財は当社の看板であり代表です。その社員が不健康そうでは、お客様からの印象も悪くなりますので、「さすがミツウロコさん」と言われるような健康状態を心身ともに維持していただきたいと思います。今までは健康診断を受けましょう、煙草をやめましょう、散歩をしましょうといった簡易レベルでしたが、もう少し社員一人ひとりに寄り添ったオーダーメイドの健康促進ができればと考えています。ミツウロコグループに入社して社員番号さえあれば、福利厚生面も含めて健康のことは一切心配しなくても大丈夫という環境を提供したいと思います。仮に健康に対する不安があれば、その不安が解消されるまで会社がフォローしてくれる体制を整えることで、安心して当社で働き続けることができるでしょう。
6つのマテリアリティは、KPIなどの定量目標を定めて進捗管理と活動評価を行っていますが、目標を十分に達成した、あるいは完全に定着化したものがあれば、集約化したり入れ替えたりしてもかまわないと考えています。まだまだ課題は出てくると思いますので、定期的にマテリアリティを見直しながら、多様なステークホルダーの皆様と新たな価値創造を継続し、持続可能な社会づくりに貢献していきます。

参加型企画でステークホルダーとのエンゲージメント向上を図る

当社グループはESG指数の一つである「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に選定されました。一般的な投資家の方々は、我々が発信した情報をベースに評価・判断をしていると思いますので、これからも充実した情報開示を心がけていきます。
ステークホルダーの皆様とのエンゲージメントに関しては、参加型の企画を用意することでエンゲージメントの向上を図っていく方向性です。例えば先述のコーヒー農園やミツウロコフーズの工場を見学するなど、事業をリアルに体感することで当社グループのことをより深く知っていただける機会を増やしていきます。現在はまだ構想段階ですが、まずは取引先を対象に、二酸化炭素を吸収する力が強い木を植えていきたいと思っています。焼酎やウイスキーのマイボトルのように、植えていただいた木に法人名が記載されたネームタグを付けて管理し、年間CO2削減量を計測するデバイスを通じて貢献度を公表したいと考えています。
サステナビリティ経営もプラネタリーヘルスも、誰か一人が行動を始めなければ実現できません。また、善行も悪行も連鎖していきますので、たった一人の行動が、全世界80億人の行動につながります。当社グループはサステナビリティ委員会を起点としてサステナビリティ経営を推進し、プラネタリーヘルスをスタートしてまいります。これからも「豊かなくらしのにないて」として、地球にやさしいサステナブルな社会を実現します。